いよいよ「相続登記義務化」<2.そもそもの話>

さて、そもそもの話です。
「相続登記が【義務化】されると言うけど、これまでは義務じゃなかったの?」
「そもそも登記って何?」
【いつもの注意】以下、わかりやすさを重視して法律上は正しくない表現をしている部分もあります。「相続登記義務化という制度の雰囲気をつかむためのもの」としてご了承ください。

登記とは?

一般的なものとして、不動産登記、商業登記というのがあります。
いわゆる「会社謄本・登記簿謄本」「不動産謄本」(登記事項証明書)と呼ばれるものがあります。
これは、法務局が発行する「登記の状況を記載した」書類で、手数料を払えば誰でも取得することができます。法務局の窓口で請求する場合は、1通600円。
東京で北海道の土地の謄本を取ることもできるし、茨城で沖縄の会社の謄本を取ることもできます。

不動産登記で扱うもの、謄本の構成

不動産謄本は、大きく2つの構成に分かれています。上から「表題部」「権利部(甲区・乙区)」となっています。
①表題部
(土地の場合)所在・地番(どこにあるか)、地目(宅地か農地か山林か…etc)、地積(土地の面積)
(建物の場合)所在・地番(どこにあるか)、家屋番号(同じ土地上にいくつも建物が建っている場合、どの建物を示しているか特定する必要がありますよね?)、種類(居宅か店舗か工場か…etc)、構造(木造スレート瓦葺2階建、鉄筋コンクリート造陸屋根5階建…etc)、床面積
②権利部
甲区(所有権、差押など)甲区は、通常あります。
乙区(抵当権、地上権、賃借権など)乙区は、ないこともあります。

表題部は「外から見てわかる、その不動産の物質・形状」、権利部は「それ以外の不動産を支配する権利関係」が記載されています。

表題部の登記を申請する専門家は「土地家屋調査士さん」です。
文字どおり、土地と家屋を調査する方です。
測量する道具や機械を持っているイメージです。対象不動産を計測したり図面を描いたりします。

権利部の登記を申請する専門家は「司法書士」です。
司法・立法・行政の「司法」(法務局、裁判所)に出す書類を取り扱う仕事です。
不動産本体をどうこうというよりも、関係者の本人確認をしたり、契約書を確認したり、戸籍を調べたり、書類に実印を押してもらったりします。

<ここは文章としてはわかりづらいので、飛ばし読み推奨>
新築で建物を登記するときは、まず土地家屋調査士さんが表題部の登記を申請したあと(戸籍で言えば出生届に近い?)、司法書士が「所有権保存」として最初の所有者を権利部の甲区に登記申請します。
さらに、もし金融機関で住宅ローンを組んで新築建物を買うときは、司法書士が権利部の乙区に「抵当権設定」としてその金融機関がその建物に対し、抵当権を持っていることを登記申請します。
所有者がローンを返済できなくなった場合、金融機関は裁判所に「差押」を申し立てます。すると、裁判所が法務局に権利部の甲区に対する「差押」の登記を依頼し、競売が行われて建物が売られれば、権利部の甲区に新しい所有者が記載されることになります。乙区の抵当権は抹消されます。
<飛ばし読み終わり>

不動産登記の申請義務

表題部は、登記申請義務があります。増築したり、建物を壊したり、合筆・分筆したりしたら、1ヶ月以内に登記申請する義務があります。
権利部には、登記申請義務がありませんでした。登記をしていないことで当事者が不利益を被ったり、場合によっては特定の法律行為の効果が生じないということもありますが、それは「登記しなかった当事者の自己責任」ということで処理されてきました。

もともと相続登記は義務ではなかったの?

相続登記というのは、権利部の甲区に記載されている所有者や共有者が亡くなることで、その所有権や持分が相続人に引き継がれ、相続人が新たな所有者になったといったことを記載する登記です。権利部なので、これまで義務ではありませんでした。
「登録免許税がかかるから」「すでに自分が住んでいるから、あえて登記しなくても…」「家族のなかで欲しがる人がいない」「相続登記しなくても固定資産税の納付書は届くから特に困ってない」「相続人が誰かわからない」
という理由で、ずっと所有者が先代や先々代のままになっている不動産も多くあります。

ところが、所有者不明土地や空き家問題が近年深刻化したこともあり、(権利部の登記ではあるけども)相続登記は法改正により義務化されることになりました。相続登記義務化にかかる法律の施行日は令和6年(2024年)4月1日です。

【次回予告】
次回、「3.相続登記義務化の概要」をお届けします。自分にはどんな義務があるの? 守れなかった場合どうなるの? いつまでに登記しなければならないの? などを解説します。