いよいよ「相続登記申請義務化」<5.司法書士への依頼をお勧めしたいケース>
いよいよ「相続登記申請義務化」、シリーズ最終稿になりました。
今回は「司法書士への依頼をお勧めしたいケース」をお送りしたいと思います。
これは、もしかしたら司法書士に依頼しても時間がすごくかかったり、やったことがないから業務多忙だからと断られたり、追加料金が発生する場合もある話です。
平たく言えば、専門家である司法書士でもちょっと骨が折れるケース(特に※がついているもの)が含まれています。
対象不動産についての問題
その不動産ですべてですか?
「自宅の土地建物の相続登記を無事済ませホッとしていたところ、後日、自宅前の道路の持分も相続登記をしなければならないことが判明した」
「所有しているマンションの倉庫も持分を持っていた」
「翌年の固定資産税納付書で、なぜか被相続人が遠方の山を所有していたことが判明した」
「非課税の土地(→だから固定資産税の納付書も来ない)の相続登記が漏れていた」
というケースが考えられます。
もし遺産分割協議書をつかって登記申請をしていた場合、漏れていた不動産部分について別途、協議書を作成し(また相続人から実印をもらい)、その分についての登記を申請する必要があります。
これまでは、被相続人が不動産を所有していそうな市区町村それぞれに対し「名寄帳」(対象者が所有者になっている不動産の一覧表)の請求をして調査をする必要がありました。
令和8年(2026年)2月2日から「所有不動産記録証明制度」といって、被相続人の名前で全国の法務局で管理する不動産の照会ができるようになります。
相続人にまつわる問題
相続人が誰かわからない
離婚・再婚や養子縁組などで、相続人が誰か確定するのが困難な場合があります。遺産分割協議は「相続人全員」で行う必要があります。そのため、誰が相続人であるかという判断を誤ると、せっかく作った申請書や遺産分割協議書が作り直しになります。
被相続人が亡くなったのが大昔(昭和55年以前)(※)
誰が相続人になるかは、法律の規定により決まります。現在ですと「民法」です。民法はじめ、相続に関する規定は何度も改正されています。
特に、昭和55年以前は現在の相続のルールと大きく異なっている可能性が高いです。
被相続人が日本国籍ではない(※)
亡くなった時点で被相続人が日本国籍でない場合、まずは、その人の属している国(本国)のルールに従って相続人が決まります。
日本の民法で相続人が決まるわけではありません。
相続人に行方不明の人がいる(※)
そもそも、遺産分割協議ができません。また、法定相続による相続登記の申請もできません(行方不明者は申請人にも委任者にもなれないため)。対象である不動産の状況、行方不明の人との関係によって方法はいくつかあるため、状況によって対策をご相談することになると思います。
相続人に未成年(18才未満)がいたり、遺産分割協議ができる状態ではない人がいる
遺産分割協議は法律行為にあたるので、未成年者や「何が自分にとって得か損か判断できない、判断が困難である人」(制限行為能力者と呼びます)は家庭裁判所の手続きで、特別な保護をする必要があります。
添付書類が揃えられない(※)
「相続人が日本に住んでおらず、実印の登録ができない・印鑑証明書を取得できない」
「被相続人が外国人で、本国には戸籍制度がないため出生時からの戸籍が揃えられない」
「被相続人が亡くなったのがだいぶ前で、役所に問い合わせたところ戸籍・除票がすでに廃棄されていた」
などが考えられます。
【番外編】申請作業が大変
平日の昼間に電話に出られない、そもそも電話が嫌い
登記申請書と添付書類を出したあと、何か不備があった場合は法務局の担当者(登記官)から電話がかかってきます。
不在着信があって折り返しても、電話自体が混みあっていて繋がらないことがあります。特に今は、相続登記申請義務化が施行されたばかりということもあり、法務局は混雑しています。
「伝言メッセージがなかったが法務局の電話番号からだったので折り返した」という場合、担当者を調べるのにものすごく時間がかかります。
(不動産登記は、商業・法人登記のように「会社名や会社法人等番号で検索する」ということができません)
担当者からの連絡に対応しない期間が長く続くと、申請自体を却下される可能性があります。
プリンターが使えない
手書きでも遺産分割協議書や申請書は作れます。また、法務局にいけば書き込み式の簡単な申請書のひな型はもらえます。
ただ、誤字がないよう書くのは非常に大変です。
遺産分割協議書に誤字があったときは、相続人全員の訂正印(実印)をもらう必要があります。
対象不動産が遠方だったり、全国に散らばっている
相続登記は、その不動産がある地域を管轄している法務局に申請する必要があります。
たとえば、東京都八王子市の不動産であれば「東京法務局・八王子支局」、千葉県野田市の不動産であれば「千葉地方法務局・柏支局」です。
1通の遺産分割協議書に「違う法務局管轄の不動産」を記載することはできますが、登記申請の際には原本を添付する必要がありますので、管轄ごとに協議書を作成するか、申請するごとに添付書類の原本還付を請求する必要があります(戸籍等や住民票や印鑑証明書なども同様です)。
原本還付を請求する際、基本的に、その返してほしい書類のコピーもすべて添えて出すことになります。
プリンターがあり、コピーを自在にできる環境でないと、なかなか骨が折れると思います(コンビニ等のコピー機を利用する場合、置き忘れる危険があるためおすすめできません。特に他の相続人から預かった書類を紛失すると、揉める可能性が高いです)。
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