いよいよ「相続登記義務化」<1.導入>

いよいよ来年2024年4月から「相続登記」が「義務化」されます。
今回の<1.導入>を初回として、シリーズで何本か書いていく予定です。
まずは、相談会でよく聞かれる質問をあげてみました。
【注意】以下、細かい状況・事情によっては回答が変わります。また、わかりやすさを重視して法律上は正しくない表現をしている部分もあります。「相続登記義務化という制度の雰囲気をつかむためのもの」としてご了承ください。

複数回、相続している場合

問1.父方の祖父が不動産(土地・建物)を持っていました。祖父が亡くなり、その後に父も亡くなりました。現在、登記の名義人は亡き祖父のままです。
孫の自分は【父が相続登記をしなかった義務】を相続人として引き継ぎますか。

答1. ✕
この場合、祖父の相続人は父です。その後に相続登記が義務化されても、孫に相続登記の義務はありません。
(借金などの債務と違い、相続登記の義務は承継されません)

すでに相続が発生している場合

問2.不動産所有者はすでに亡くなっていて、自分は相続人です。
2024年3月31日までに相続登記をする必要がありますか?

答2. ✕
この場合、法律が施行される2024年4月1日が起算点(カウントダウンの開始)になり、起算点から3年以内に相続登記を申請する必要があります。そのため、今回のケースでは「2027年3月末まで」に相続登記を申請する必要があります。
(仮にこれが「〇:正しい」となると、たとえば「2024年3月30日に不動産所有者が亡くなった場合、1日で相続登記を申請しなければならない」ことになってしまいます……)

相続人だが、遺言があって不動産を取得しない場合

問3.父はまだ生きていますが、遺言で「不動産を長男に相続させる」と書いていましたた。自分は次男だから、父が亡くなったときに相続登記の義務はないと思います。

答3. 〇
この場合、長男にその不動産の相続登記の義務が発生します。
ただし、長男が「その不動産は欲しくない」と拒否した場合や父より先に亡くなった場合、相続人全員で遺産分割協議をすることになるため相続登記の義務が発生する可能性があります。

不動産の所有者が日本人でない場合

問4.母が日本に不動産を持っていますが、外国籍のまま(帰化せずに)亡くなりました。その場合も相続登記する必要がありますか?

答4. 〇
不動産の所有者の国籍に関わらず、亡くなればその相続人に相続登記の義務が発生します。
※相続人の国籍も、日本人に限定されません。

不動産の所有者が日本に住んでいない場合

問5.自分は日本に不動産を所有していますが、日本には住んでいません。その場合も、自分が死んだときは相続人は相続登記をする必要がありますか?

答5. 〇
不動産の所有者が国外にいる場合でも、亡くなればその相続人に相続登記の義務が発生します。

亡くなった方が不動産をたくさん持っていた場合

問6.亡き母の自宅の土地建物は自分に相続登記しましたが、価値がない山の土地や、近所の人と共有している道路の持分は相続登記をしていません。
それでも、自宅の相続登記のほうは行ったので、山の土地や道路の持分の相続登記の義務は免れますか。

答6. ✕
不動産一つ一つ、相続人1人1人に義務が発生します。不動産の種類や価格、全体を所有しているか持分かに関係なく、所有者・共有者が亡くなったときは相続登記をする必要があります。


【次回予告】
次回は<2.そもそもの話>です。「登記って、そもそも何?」「相続登記義務化って言うけど、今までは自由だったの?」などを解説します。